2012年6月6日水曜日

フォースタルバー ~ 地球惑星科学バー Vol.6 ~



  地球惑星科学バー Vol.6 のお知らせです!
  6月ということで、これから雨が多くなると、土砂災害も増えることが予想されます。そこで今回の地球惑星科学バーは、山体崩壊や災害のメカニズムを地形や地層から解読する(自然地理・地形学)スペシャリストである吉田英嗣さん(明治大学・専任講師)をゲストに迎え、「地質災害・防災」といった観点で地球惑星科学に触れてみましょう。吉田さんを交えてみなさんに、グラスを片手に気軽にディスカッションをしていただきたいと思います。
 地球惑星科学のロマンや社会との関わり、そしてそれを支える論理の面白さにぜひ触れてみてください。

-----------------------------------------------------------------------

【イベント】サイエンスバー(研究者を交えて、お酒やコーヒーを片手にざっくばらんに語り合うイベントです)
【開催日時】2012624()13:00-15:0012:50開場)
【場所】アイリッシュパブ・クラン(clann) (東急東横線自由が丘駅南口から徒歩15秒)
 TEL: 03-3725-9116
 住所:東京都 目黒区自由が丘1丁目8-18自由が丘ノーブル
【講師】吉田英嗣さん(明治大学・専任講師)
【ファシリテーター】千葉崇(筑波大学生命環境系)
【対象】主に成人以上の方
【定員】30
【料金】参加費1500円( 2ドリンクが含まれます。コーヒーなどのソフトドリンクもあります。)
【募集締め切り】623()
【主催】Universal Earth
【申し込み方法】お申込は以下のフォームからお願い致します

お申込フォーム


2012年6月5日火曜日

フォースタルバー1問1答:質問の回答と解説

Q.1:雪崩は発生頻度が高く、同じ場所でも1年間で複数回起こる?

→A.○ 解説:雪崩は山の斜面に積もった雪が重力により高速で移動する現象です。急傾斜の斜面で発生しやすく、範囲はおよそ数百m~数kmです。同じ場所で起こるとすると、1年に複数回起こります。富士山でもよく観測されます。気温が低く、大量の新雪が急激に積もると発生しやすくなる表層雪崩(12月~2月頃に多い)、降雪や降雨の後、気温が上がった時に発生しやすくなる全層雪崩(3月~4月頃に多い)やスラッシュ雪崩など様々な種類があります。2012年2月1日に秋田県仙北市で起こった雪崩では3名の犠牲者が出ました。


Q.2:土石流は地すべりで動き出した土砂がゆっくり流れる現象である?

→A.× 解説:土石流は土砂が河川などの水と混ざり、流れることで発生します。範囲はおよそ数百m~数十kmに及びます。普段水の流れていない谷でも起こる可能性があり、同じ場所で起こるとした場合、1年に複数回起こる可能性があります。雨などで山体が崩れ河川に流入することで発生します。特に雨量の多い時期に発生しやすいとされます。2009年7月21日に山口県防府市で発生した土石流は大きな被害をもたらしました。


Q.3:地すべりは水とともに高速で土砂が流れる現象である?

→A.× 解説:土地の一部が地下水等に起因して滑り面を境に上部の土砂がすべる現象または、これに伴って移動する現象とされます。高速で移動するものから、ゆっくり滑るものもあります。被害はおよそ数十m~数kmに及びます。2012年3月7日に新潟・上越市で発生した地すべりで、数棟の住宅が倒壊しました。同じ場所で起こるとした場合、およそ数十~数百年に1回起こります。


Q.4:火砕流は噴火に伴いガスや火山灰が高速で斜面を流下する現象である?

→A.○ 解説:火砕流は、噴火に伴い火口から出た高温の溶岩やガス、火山灰などが混じり合い、高速で斜面を流れる現象です。範囲はおよそ数百m~数十kmに及びます。1991年長崎県の雲仙普賢岳での火砕流は多くの命を奪いました。しかし、爆発的な噴火を起こさない火山では、起こる可能性が少ないとされます。同じ場所で起こると仮定すると、大規模な火砕流の頻度を噴火の頻度と同じとした場合、およそ数十~数百年に1度の割合で起こります(噴火の頻度に依存します)。


Q.5:火山泥流は泥が流れるため、流下速度が遅く、走って逃げることができる?

→A.× 解説:火山噴火の際に噴出した火山灰などの細粒物が大量の水を含んで山の斜面や谷を高速で流れ下る現象です。高温である場合もあります。範囲はおよそ数km~数十kmに及びます。同じ場所で起こるとして、数十~数百年に1回起こります(噴火の頻度に依存します)。1926年5月24日、北海道十勝岳の噴火で山頂付近の雪が融解することで泥流が発生し、144人の犠牲者が出ました。


Q.6:噴火や地震によって山体が崩壊し流れる大規模な現象を「岩屑雪崩(がんせつなだれ)」という?

→A.○ 解説:火山体の不安定な部分が、例えば噴火や地震など何らかの原因で滑り出し、高速で山体斜面を流れ下る大規模な現象です。この現象が起こった場所としてはアメリカのセント・へレンズ山、北海道駒ヶ岳や福島県磐梯山が有名です。範囲はおよそ数km~数十kmに及びます。同じ場所で起こるとした場合、大規模なものは数千~数万年に1回起こります。


Q.7: 地質災害は、どこで起こりやすいのかを特定することが比較的簡単である?

→A.○ 解説:地質災害は起こりやすい地形及び地質がある程度わかっていますので、地形や地下の地質を把握すれば、どこで災害が発生しやすいのかを把握することは比較的容易だといえます。地形学や地質学がここで貢献しています。


Q.8:津波は海で起こる地震以外の原因でも起こることがある?

→A.○ 解説:大規模な山体崩壊により崩れた山体が海や湖に流入することで津波が発生することがあります。時代を遡ると、1640年に北海道の駒ヶ岳の山体が、岩屑雪崩により噴火湾へ雪崩れ込んだことで波高8mを超える津波が発生しました。


Q.9:地質災害は地層と古文書を調べることで発生履歴を完全に解明できる?

→A.× 解説:大規模なものは地層に保存されたり、被害が出れば古文書に記されることもありますが、小規模のものはほとんど残りません。ゆえに起こったこと全ての履歴を解明することは難しいといえます。


Q.10:災害が別の災害のリスクを高めたり、新たな災害の引き金となり得る?
→A.○ 解説:例えば海で起こる巨大地震により、日本の至る所で土地が圧縮力や引き伸ばされるような力がかけられた場合、内陸にある活断層が動きやすくなります。地震により地下で土砂も移動しやすくなる場合もあるため、土砂災害が起こりやすくなる可能性もあります。